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 2010年から、いよいよ国産自動車メーカーによる電気自動車(EV)の一般向け販売が始まる。三菱自動車は10年4月から「i-MiEV(アイ・ミーブ)」の個人向け販売を開始予定で、09年7月31日から購入希望受付を開始している。日産自動車は09年8月2日に新型EV「リーフ」を発表、10年度後半に日本と北米、欧州で発売する予定だ。

 しかしEVには、通常のガソリン車やハイブリッド車に比べるとさまざまな弱点がある。中でも不利なのが、「航続距離の短さ」「充電時間の長さ」「高価なバッテリー」の3つだ。この弱点を解消し、電気自動車の便利性を高めて普及を進めるための決め手が、米国のベンチャー企業ベタープレイスが提案する、バッテリー交換式EVとバッテリー交換ステーションを組み合わせた手法だ。

 ベタープレイスが担当するのはバッテリー交換ステーション運営などのインフラ提供で、対応EVは提携自動車メーカーが生産する。ユーザーは対応EVを購入して、設備や交換バッテリーの利用に必要な固定費と、消費電力に応じた従量料金をベタープレイスに支払う。ちょうど携帯電話の料金システムに似た仕組みを想定している。

 日本法人のベタープレイス・ジャパンでは、バッテリー交換ステーションと日産「デュアリス」を改造した対応EVを使って、09年4~6月に横浜市で実証実験を進めてきた。約1分30秒でバッテリーを交換できることや、2000回の交換でもトラブルが出ないことを確認している。さらに10年1月からはタクシー会社の日本交通と共同で、六本木ヒルズを拠点に、3台のバッテリー交換式タクシーを使った運用実証実験をする予定だ。

バッテリー交換式EVが通常のEVより優れている点は?

 EVの航続距離は、三菱i-MiEVの場合は10-15モード計測値が160kmで、市街地で一般的な使い方をした場合の実質的な航続距離は、条件にもよるが100km程度だという。日産リーフの公表値も160kmで、同じ程度と予想される。ベタープレイスが使用するバッテリーも現在のところ航続距離100~150km程度で、この点については従来のEVとほぼ同等だ。通常のガソリン車が1回の給油で200~300km程度は十分走れるのに比べると、移動の自由度はかなり制限される。

 ではバッテリー交換式EVは、バッテリーが固定式EVと比べて具体的にどんな利点があるのだろうか。

 それは充電時間にある。i-MiEVの場合、200Vの家庭用電源でフル充電に約7時間、100Vの場合は約17時間かかる。専用の急速充電装置を使えば約30分で80%充電できるが、この場合は専用機器を設置した充電ステーションに行かねばならず、まだ設置場所も少ない。日産リーフも家庭用200Vで約8時間でフル充電、急速充電装置で約30分で80%充電と同じくらいのスペックだ。

 一方、ベタープレイスの方式では、フル充電のバッテリーに約1分30秒で交換できる。ガソリンスタンドで満タンにするよりも早いほどだ。通常のEVで急速充電する場合の30分に比べると、圧倒的に早い。

 バッテリー交換ステーションの設置が進み、都市部だけでなく高速道路のサービスエリアなどでも利用できるようになれば、ガソリン車との実質的な使い勝手の差はかなり縮まるはずだ。なおバッテリー交換式EVは、家庭用電源でも充電できる。また、急速充電器による充電にも対応しているので、通常のEV向けの充電ステーションも利用できる。

高価なバッテリーはユーザーが所有せずレンタルで

 第二の特長は、高価なバッテリーの費用を節減できる点にある。i-MiEVの車両本体価格は459万9000円だが、バッテリー本体だけで200万円くらいするという。電気自動車は政府から上限139万円の補助金を受けられるため、実際にi-MiEVを購入する際のユーザー負担は約320万円。それでも、ハイブリッド車のトヨタ「プリウス」の最安グレード205万円と比べると、かなり高価な買い物になる。

 ベタープレイスのビジネスモデルでは、ユーザーはバッテリーを購入せずにレンタルする形式になる。対応EV購入の初期費用が抑えられるだけでなく、もしバッテリーにトラブルが起きた場合でも高価な交換費用を払わずにすむ。

 またバッテリーの技術は日進月歩で進化しているが、通常のEVは購入時に付いてきたバッテリーを使い続けるため、その恩恵は受けられない。バッテリー交換式なら寿命が尽きたものを最新のバッテリーと入れ替えていくため、充電容量増や軽量化が進めば航続距離が伸びるし、低価格化されれば利用料金にも反映されるだろう。

 そのほかにも交換ステーションでバッテリー充電や管理を行うため、充電にかかる費用が安くなる夜間に充電する手間がかからない。自然放電による劣化の可能性が少ないといったメリットが考えられる。

稼働率が高くEV化のメリットが大きいタクシーから普及を進める

 ここまでは良いことずくめのようだが、実際にバッテリー交換ステーションと対応EVが普及しなければ絵に描いた餅だ。ベタープレイス・ジャパンの藤井清孝社長は普及のためのステップとして、「まず稼働率の高いタクシーから導入していく」と語る。

 「東京で走っているタクシーは約6万台と北京に次ぐ世界第2位で、ロンドン、パリ、ニューヨークを合わせた規模より大きい。そして日本国内のタクシー台数は乗用車全体の約2%だが、走行距離では約20%を占め、全CO2排出量の約3%に相当する。だからタクシーのEV化は、多大な環境インパクトをもたらす」という。

 都内のタクシーの1日当たりの走行距離は約300kmだが、運転エリアはほぼ一定のため、バッテリー交換ステーションを100カ所設置すればカバーできるという。現在はLPG(液化石油ガス)を燃料としているタクシーが多いため、LPGステーションが都内各所に設置されている。これをバッテリー交換ステーションに代替していけば、用地取得などの初期投資を抑えられる。

 現状のLPGタクシーの年間1台当たりのエネルギー(燃料)コストは、93万円。ベタープレイス・ジャパンの試算によれば、バッテリー交換式EVタクシーの年間エネルギーコストは電気代が15万円、必要なバッテリー個数と寿命から算出したバッテリーコストが52万円、交換ステーションの減価償却費が6万円で、計73万円。LPGからEVへの変更で、年間20万円(-22%)のコスト低減をもたらすというから、タクシー会社にとってもメリットは大きい。

来年1~3月、六本木ヒルズで3台のバッテリー交換式EVタクシーが走る

 前述のように10年1月初旬から3月中旬まで、ベタープレイス・ジャパンと日本交通が共同で、六本木ヒルズで3台のバッテリー交換式EVタクシーによる運用実証実験を行う。資源エネルギー省が電気自動車普及環境整備実証実験の一つとして資金を拠出、バッテリー交換ステーションを周辺に設置して、3台のEVタクシーに対して6~7個のバッテリーで運用する。EVタクシーの車種は未定だが、EV開発経験が豊富な東京R&Dが国産車をベースに製作する。

 ベタープレイス・ジャパンはこの実証実験を皮切りに、10年以内に都内のタクシーをすべてEV化し、さらにレンタカーやカーシェアリングなど、稼働率が高い他の用途にもバッテリー交換式EVを普及させるタイムスケジュールを描いている。その先に、現在のガソリンスタンドをバッテリー交換ステーションに転用して、自家用車のEV化を進める構想だ。

 実証実験のEVタクシーは六本木ヒルズ地下のタクシー乗り場に配置し、通常のタクシーと同じ料金で一般客が利用できる。ただし当面の営業エリアは六本木ヒルズから5km以内、東京駅や新宿、渋谷などの料金2000~2500円程度の地域に絞って運用する予定だ。

 藤井社長はEVタクシーのメリットの一つに、「市民が電気自動車の良さを、皮膚感覚で実際に体験できること」を挙げている。ハイブリッド車のプリウスに、タクシーで初めて乗ったという人も多いはずだ。エンジン音がしない、変速ショックがない、低速トルクが強くて発進加速が良好という電気自動車ならではの特性を、実際にEVタクシーで体験してみてはいかがだろうか。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090828-00000005-trendy-sci
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